雑誌を読む限りは、特ダネがほしい。

今日はレコーディングエンジニアの女の子の取材。
エンジニアといえども、アシスタント歴も短いよう。レコーディングのために立てたマイクも
アーティストからいじられてしまうくらいなのだという。
仕事の内容を話してくれ、というのも酷に感じられる。しかもライターは、どのようにCDが
できあがっていくのかも知らない人間。さらにクライアントは、つっこんだ質問は避けろという。
(取材する人間と過度に親しくなるのを嫌う)
そんななかディレクションをしなければならなかった。もう踏んだり蹴ったりだ!
せめて人選をさせてくれたら、と思うのだが、私の立場ではどうすることもできない。
ちなみに今回はSSLの卓の前で撮影。何もかもがちぐはぐで、滑稽だ。

本を一冊つくるにも、人選によって全く違うものができると思う。
スキルがあって、志を高く持とうとする人間といっしょに仕事をしたいのだが、
そういう方に出会えるのはごくまれだ。物事は実にうまくいかない。

時間の合間を見て、サンレコの12月号をパラパラとめくる。
定期購読を募っているらしい。サンレコは営業の手腕もあるようだ。


機材レビューの内容については、政治的な圧力がかかっているので鵜呑みにすることは
ないが(笑)、インタビュー記事が最高にイイ。
どこの雑誌にも書いていない、音楽制作時の特ダネがある。
インタビューする人間はある程度知識がなければ、つっこんだ質問などできない。
それにインタビューは“会話”であるから、こちらが予知していない返答がある
ことも多いのだ。それに対応できるのも、ある程度の素養が必要とされると思う。


インタビューに同行していて不思議に思うのが、
「仕事をやっていて楽しかったことは?」とか「大変だったことは?」などと
訊ねるライターがいることだ。
しかもかなりベテランのライターに限ってそのような質問をする。


私は未だかつてそのような質問をしたことがない。
その仕事についてわずか3年の人間であっても、「楽しかったことは?」
「大変だったことは?」の質問に即答できる人間などいないはずだ。
必ずそこに沈黙が生まれ、相手は答えに窮する。
しかもそんな漠然とした質問をしたところで、果たしておもしろい記事
になるのだろうか。


そういう意味ではサンレコのインタビューは、的を得ていておもしろい。
ツッコミがいいのだ。
アーティストと取材する側が、比較的同じ目線で話をすることができている。
取材する側がその分野に長けていないと、アーティスト側もことばを選ぶだろうし、
気も使う。恐らく話も弾まないだろう。


雑誌を読む限りは、特ダネがほしい。
特ダネを引きだせる力が、ライターの手腕なのだと思う。