レコード離れ。

20代半ばの頃まで、時間があれば私は中古レコード屋さんに行っていた。
当時私の仕事は、大型輸入盤店のバイヤー。なのに休憩時間に、中古レコード屋さんに行く。
帰りに、馴染みの輸入盤卸に顔を出すこともあったっけ。
休みの日といえば、電車で中古レコード屋さん廻り。空き時間にはレコードのことを考え、
音楽雑誌を読みふけっていた。
完全にイカれている。でも、それが幸せだった。

DJではなくても当時の音楽好きの20代は、休みの日には必ずレコード屋廻りをしていたと思う。
しかし今の20代は違うらしい。その証拠に最近はどこの中古レコード店もほとんどレコードを
買い取ろうとしない。売れないのだ。レコードの消費量が圧倒的に少なくなっている。
先日インタビューに行った、DJの自宅のレコードの少なさにも驚いたくらいだ。
たぶん、我が家のほうが多い(笑)。これでも自宅には極少量しか残していないのに。
まあ多ければいいというわけではないが、プロのDJでさえもほとんど買わないんだなあと
思った。20代のレコード離れは著しい。

年齢を重ねるにつれ、レコードやCDを買わなくなっていく。しかも若年層はレコード屋CDは
チャートもので手一杯のようだ。なかでも、洋楽が好きという人はごく一部ときている。

レコード産業は〈新譜〉で、30代以上を惹きつけなければ苦しくなる一方だろう。
BOXで過去の遺産を売っていては、頭のカタイおじさんやおばさんを増やす一方である。
クラブも30〜40代にアプローチしてもいいと思う。機材だってツーカーじゃないけど、
年輩向けのDAWがあってもいいような気がする。EQの文字が異常にデカイとか(笑)。

20代半ばの頃、クラブジャズが流行っていたな。BLUE NOTEの再発に狂喜乱舞し、
中古屋さんでカッコイイなあと思うジャズのレコードをひたすら発掘し続けるわけである。
DJでもないのに(笑)。手を休めることなく、エサ箱をトントンいわせる。
それがルーティン化していたように思う。


ハウスだと先日Yellowに来ていたリル・ルイスだとか、人気だったな。
(まさかDJを引退するとは!)
マドンナもハウスに手を出し、UKロックの人たちもやはり自分たちの音楽のなかに
4つ打ちを取り入れていれはじめていた。
…ちょうど私が六本木WAVEにいた頃だっけ。
当時の私はガラージュが好きでなかった。年齢を重ねてようやく、そのおもしろさも
わかるようになってきたが、当時はトリオ・マタモロスとか(笑)オールド・キューバ
ほうが好みだった。それに、ワールドミュージックの魅力にどっぷり浸かりはじめた頃で、
世界のあらゆる音楽を聴いていた。


もちろんロックも聴いていた。わかりやすい例だと何だろう。プライマスとか?
これは果たしてわかりやすいのか?いささか疑問だが、先日タクマとHMVに行った時
プライマスの話をしたぐらいだから、わかる人間にはわかるということだろう。


今、20代の女性でトリオ・マタモロスが好きなんて、まずいないだろうな。
やっぱり歌はアルセニオよ!なんて言う20代がいたら、引かれるだろうし(笑)。
でもいいんだよなあ。気品があって、洗練されていて。


トリニダート・トバコの音楽、モロッコの音楽、ギリシャの音楽、スーダンの音楽…
それぞれみな素晴らしいのに、それらを耳にすることはほとんどないだろう。


いったいみんな何を聴いているのか。アジアン・カンフー・ジェネレーションか?
スタジオ・ヴォイスで竹田賢一氏が、彼らの名前を出すことに仰天。
なぜ知っているのだろう。
ヘンリ・カウから、アジアン・カンフー・ジェネレーションはどう考えても繋がらない。
竹田氏も丸くなったのか。