Moonbeams@UNIT

今年に入ってから、なんだか妙に元気がない。淋しさを感じることが増えてきた。
私は知らない人のなかにいるときには、淋しさを感じることがないのだが、
知っている人もしくは、気心の知れた人の間にいるときのほうが、孤独を感じることが
多い。

あったかくなって時間ができたら、ふらっと知らない土地にでもひとりで旅行に
行こうかな。
なんだかとても気分を替えたいのだ。

今日はMoonbeams@UNITへ行った。
なんだか久々にクラブに出向いたような気がする。


24:00にエントランスへ。こんなに早い時間に入るのも珍しい。
メインフロアに行くと、そでにcalm氏がレコードを廻していた。
ハウスを中心に観客を盛り上げている。いつもよりぐっとていねいに廻して
いたような印象を受けた。
フロアには男性が多い。女性は男性に同伴で、という客ばかりだ。
個人的には男性客の多いパーティのほうがいい。
ある程度の年齢の男性客は、音楽が目的でなければ足を運ばないからだ。
音楽好きが多く集まるパーティのほうが、やはり楽しい。
特にunitはナンパ目的の男性が少ないような気がするので、ゆっくりと
音楽に身をゆだねることができる。


しばらくすると、聴き慣れたアコースティックギターのフレーズが流れはじめた。
〈Stairway to heaven〉レッド・ツェッペリンだ。
最初はクスっと笑ってしまったが、そのうちぐっと聞き入ってしまう。
「Uhh〜makes me wonder」重いフレーズだが、やはりいい。
20代の前半に、このリリックとサウンドをつくり出したツェッペリンは鬼才だ。


隣に立っている人の顔をのぞくと、なんと加藤雄一郎さん。
彼の隣には、西岡大輔くんもいた。
「髪を伸ばしているの?」と訊ねると、「最近、キモイって言われてるんでやめて」
などと笑わせる。彼は毒を吐くことも多いが、意外と繊細なんだな、と思うことも
多い。


ステージでは、KENKOUバンドが演奏をはじめた。なんとKENKOUさんはドラムの
後ろに座っておらず、鍵盤を操っている。
今回はキーボード中心でやるから、という予告どおり、キーボード/シンセ3人。
ニューロマンティックを思わせるシンセサウンドが意外だった。


KENKOUバンドが終わると、calmさんのDJ。
続いて札幌のshuren the fireとなる。日本人のHip Hopのステージを見るのは、
12年ぶり。最初は彼のライムに抵抗を覚えたが、しばらくすると彼らのサウンド
ハービー・マンのようで、なかなかおもしろいと思えるようになった。
しかもライムを踏みつつ、フルートを演奏する。その妙な取り合わせがおもしろかった。


それからcalmさんのDJで朝まで。
ほとんど休むことなく、汗をたくさん流しながらプレイする姿が印象的。
特にフィラデルフィア・オーケストラの〈Love is Message〉には、こころを揺るが
された。
いつだって本当に伝えたいことは、シンプルだ。


今回のK.F名義のアルバムは、メッセージがシンプルゆえクサイなどという輩もいたが、
ダンスミュージックはもともと非常にシンプルで、クサイのだ。
もちろん、ジャズやアフロなど複雑に“聴こえる”音楽もあるけれど、決して狙っては
いない。そこが黒人の恐るべき才能であり、おもしろいところなのだ。
そういう意味でも今回のK.F名義のアルバムは、私にとってダンスミュージック[黒人音楽]
を感じさせるものだった。


最後にcalmさんは帽子をとり、深々と観客に頭を下げた。