孤独な男。

今の仕事関係者とは、よくケンカをするし、よく叱る。
けれどもすぐ笑顔になり、冗談を交わせる。人間関係では本当に恵まれているなあと思う。

彼らは私のことを“職人”などとふざけてるのか、本気なのかわからないような愛称で呼ぶ。
不器用な私を理解してくれて、本当にありがとう。
これからもいい仕事をいっしょにやっていこうぜ!

二子山親方が亡くなる。55才。若すぎる死だ。
力士を辞めたあとは、親方となり仕事に専念してきた彼だが
結局、部屋と彼を支えていた奥さんを失ってしまう。


70年代、彼は相撲界のヒーローだった。
小さく細い身体、端正な顔だち…。
当時、小学生だった私が知っている数少ない力士だった。


口下手だった初代貴乃花が愛した女性は、私と同じ大分生まれの女性。
それも私の実家の目と鼻の先にあるようなところに住んでいたせいか、
私の両親ともよく、彼女のことについて話した。


相撲部屋のおかみさんというのは、心労の多い役割だと思う。
しかも親方は相撲に身を捧げたような男だ。
さらに二人の息子を、子どもとして接することもできない状態で
日々を費やしていかなくてはならない。
一人の人間として、女性として生きたいという彼女の気持ちも
わからなくはない。


愛する伴侶を失った親方は、辛苦に苛まれていたのではないかと
思う。やがて彼は55年の生涯を閉じる…。


二子山親方は、本当に幸せだったのだろうか。
彼の肖像写真を見るたび、淋しさを感じざるを得ない。