ハットフィールド&ザ・ノース@川崎クラブチッタ

彼らのサイン

今年の流行は黒らしいが、ここ数年黒を着たいと思うことがほとんどない。
色が魅力的だから、いろんな色を着たいという思いが強く、黒はシンドイ。

10代後半から22歳くらいまで黒しか着ることがなく、引き出しやクローゼットは
黒ばかり…という人間が私だったのに。
人間は変わるもんだ。

20代前半くらいのころは、5年がずいぶん昔のことのように感じられたのだが、
最近は5年前がつい先頃という感じがする。
5年がずいぶん昔だった頃は、人間は変わらないと信じていたのだが、
5年前が近くなってからは人間は変わるものだと思えるようになった。


川崎のクラブチッタに、ハットフィールド&ザ・ノースを見に行く。
今日はいっしょに仕事をしているスタッフがいっしょ。
ハットフィールド&ザ・ノースはレコードジャケットに収められた写真が
幻想的なので、私のなかでは幻のような存在に思えてならなかった。


会場前には、40代とおぼしき男性ばかり。
女性はほとんどいないだろうと踏んでいたのだが、意外と多い。


年齢層が高いことを予想しているせいか、会場は椅子を並べてある。
開演時間ぎりぎりになって、席につく。


彼らの専属カメラマンであるひとりの日本人が現れ、前説をはじめた。
ハットフィールド&ザ・ノースのメンバーから前説をやってほしいと
いう依頼があってやっているのだという。
その後、4人が現れる。デイブ・スチュワートの代わりには、
アレックス・マクガイヤーなるキーボード奏者。
果たしてどんな演奏をするのだろう。


最初の2曲はファーストアルバムからだった。
ピップ・パイルのドラムが危なかしい。フィル・ミラーのギターも
不安定だ。年齢が年齢だし、大目に見ようと親ごころのような気持ちに
なる。ただこんな調子だから、完全主義のデイブ・スチュワートは
参加したくないんだろうな、と思った。


その後、アレックス・マクガイヤーのミスタッチはあれど、
演奏が少しばかり安定してくる。
彼らの曲は極めて難解なので、これだけやれれば十分ではないか。
ただ、リチャード・シンクレアのベースが全く聴こえないことに
気がつく。エンジニアには、正直落胆させられた。


休憩(!)を挟んで第2部へ。セカンドの曲からはじまった。
リチャード・シンクレアはおそらく声が出ないだろうと踏んでいた。
それでキーを変えると思っていたのだが、そのままで歌っていた。
これには驚き!
彼の声は生で聴くと、本当に美しい。


ライブが終わるといっしょに行ったスタッフは、サイン会に
参加したいからといい、パンフレットを購入した。
それでサイン会が終わるのを待っていると、カンタベリー界のご意見番
坂本理氏に会う。
今日もリチャード・シンクレア氏にインタビューしたようだ。


待っているうちに手持ち無沙汰になり、結局私もサイン会に入る
ことにした。一番最後。まあいいっかと思う。


還暦に近い彼らは、おそらく本国では泣かず飛ばずなのだろう。
しかし日本では、サイン会に100名を超える人がいる。
だから彼らが日本びいきなのも、わからないではない。


いよいよ私の番になる。英語も大して話せない自分なのだが、
彼らに妙に歓迎されてしまう。
リチャード・シンクレアは、胴がハート型のベースの絵を
書く。アレックス・マクガイヤーは飲みかけのウイスキー
私に渡し、飲めという。
ピップ・パイルは、“the last but the most beautiful”などと
書いてくれる。(お世辞でもうれしい…)
しかもその後4人は、いっしょに飲みに行こうと誘う。


どうしようと…思い、いっしょに行ったスタッフを呼びに行くと、
警備員がやってきて、彼らにどう返事しますか?と言われてしまう。
結局、明日の仕事が気になってお断りしたのだが、今考えると
こんな機会もないんだし、いっしょに行けばよかったと思った。